接吻《修正中》
親父がいない日は、薬指の結婚指輪を中指にはめる。

中指なら、俺が気付かないと思ったのか?

シルバーのシンプルな結婚指輪は、ただの飾りだ。

その指輪と同じくらい、俺と親父はお袋の中で《家族》という飾りなのか・・・?


「・・・俺、疲れたから寝る。勉強もしたいし・・・出てくなら鍵かっといて・・・」


座り込んだまま、顔すら上げないお袋をその場に残し、俺は部屋へと向かう。

お袋はまた小さく俺の名を呼ぶが、後ろを振り返る事なく、二階に駆け上がった。

ずっと溜まっていた物を吐き出した。

吐き出したから軽くなるはずの胸の中は、何故か前より重く感じる。

あんな姿のお袋を見た事なんかない。

でも。

お袋が悪いんだ・・・。

ああなって、当然なんだ・・・。

バタンと小さくドアを閉め、俺は角のベッドに崩れ落ちるように倒れた。

体も、心も・・・重い。
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