叶わない恋
泰介が出掛けて行った安心感と帰って来てからの恐怖で睡魔などどこかへいってしまった。気分を変えるために台所に行きトイレをすませてから布団に入って目をつぶった。

安心感がうまれたからか深夜をすぎた頃にようやくうとうとしはじめていた。玄関を開ける音すら聞こえなかった。

寝室の扉が大きな音をたてて開いた。びっくりして飛び起きると逆光で顔は見えないが怒っている泰介がそこにいた。

『お前なんで部屋出たんだ！』

深夜にも関わらず泰介は大きな声で怒鳴りながらあたしの髪を掴んだ。

『と、トイレいった』

『嘘つくんじゃねーっ！！』

震えた声で返したあたしの言葉は泰介には届くことなどなかった。髪を引っ張りあたしを立たせて手を振り上げ頬を殴る。

『やめてやめてほんとだから』

悲鳴に近いあたしの声すら届くことなく泰介は頬やお腹を殴り続けた。いつの間にか抵抗すらできなくなっていた。
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