七夕レイニー
「雨は好き?」


 押し黙る私のために、話題を変えてくれたのだろうか。


「好きでも嫌いでもないかな。でも、今日の雨は好きじゃない」

「どうして?」


 私は、ちょっと傘の位置をずらして、空を見上げた。

「だって今日は七夕なのに」

「雨が降ったから、織姫と彦星が会えないって?」


 私はコクンと頷いた。何が始まりだったのか忘れてしまったけど、私は毎年この七夕を心待ちにしていた。
何かを願うわけでもないけれど、この日の空を見上げるのは、大切なことだった。

 ? また思い出せないことだ。
サク君のことといい、私の頭はイカレてきてしまっているのか?

いやいや、それは困る…。

空を見上げているサク君の横で、私はまさかな、首を振った。


「そっか…じゃあ『催涙雨』って言葉を知ってる?」

「さい、るいう?」


 耳慣れない言葉。でも、サク君の言葉を繰り返すとほうと不思議な心地に包まれる気がした。


「七夕の日に降る雨のことを言うんだ。雨が降ると織姫と彦星が会えなくて悲しんでる涙が雨になって降るっていう話もあるけど、その逆も意味のもあるんだ」

「逆?」


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