「視えるんです」
自分の部屋のドアを開け、パチッと電気のスイッチを押す。
「よぉ、南沢」
「ひゃっ!? あ、雨宮さん……!?」
初めて会った時と同じように、ベッドの上でくつろぐ半透明な男、雨宮さん。
彼が再び、私の前に現れた。
「な、なんでここに居るんですかぁ……!!」
「俺はずっとお前のそばに居たが?」
「へっ……」
「あの日からずっと、俺はお前のそばに居た」
……えぇ!? あの日からずっと、私のそばに……!?
な、何それ……そんなの、全然知らない!!
私が寝てる時や着替えをしてる時や、お風呂に入ってる時も一緒に居たってこと……!?
「フィルター」
「え?」
「人の目ってのは、常にフィルターがかかってんだよ」
突然『フィルター』と言った雨宮さんは、自分の目を指差して言葉を続けていく。
「人の目は、常にフィルターを通して世界を見ている。
普段は鮮やかで濃い色だけを見て過ごしているわけだが、そのフィルターが外れた時、普段は見えない淡い色……霊が視えるようになる」
「フィルター……」
「お前は、今日先生や本田と一緒に行動していたために、完全に視える人間になってしまった。
俺がフィルターを貼っていたのに、先生め、余計なことを……」
……はい?
雨宮さんが、私にフィルターを、貼っていた……?
「視えるようになり始めていたお前は、危険以外の何物でもない。
だから俺がフィルターを貼り、お前を守っていた。
ヤツらと下手に目を合わせると、危険だからな」