「視えるんです」




「じゃあな、南沢。 一人で大丈夫か?」




その言葉に、にっこり笑う。




「大丈夫です、あと30分くらいすれば、お母さんは帰ってくると思うので」

「そうか」




共働きの両親は、まだ帰宅していないため、家は真っ暗だ。

先生はそれを心配してくれたみたい。




「なんなら、本田を残していこうか?」

「えっ!?」

「なんか出たら、本田が役に立つだろう?
あぁでも、幽霊に逃げられるくらいだから大丈夫か」




はははっ!!と豪快に笑う先生。

……結構気にしてるのに、サラッと言うなぁ……。




「どうせ私は、幽霊に怖がられますよーだ」




ベッと舌を出し、門を開けて中へと入る。




「私は大丈夫です」




先生に、というよりは、先輩に声をかけ、にっこりと微笑んで手を振った。

そんな私に先輩も微笑み、小さく手を振って応えてくれた。


その後、先輩を乗せたまま車は発進し、私は一人、家の中へと入った。


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