「視えるんです」


ゾクッ……。

寒くなった背中が、更に冷える。




「先輩っ、怖いこと言わないでくださいよぉ……」

「ごめん。 でも、気を付けた方がいいのは事実だからね」

「……はい」




幽霊と、目を合わせるのは危険……。
うん、気を付けよう……。


……それにしても。

私と先輩の話をそばで聞いている雨宮さんは、ビックリするくらい無口。

そう言えば、先輩から雨宮さんのことを聞いたとき言ってたっけ、『物静かな奴だ』と。

今目の前に居る雨宮さんは、確かに物静かだ。

先輩が言っていたように、人の生き様を見ているだけ。 それだけだ。

何も語らず、傍らに居る。
私の部屋に来た時はあんなに話してたのになぁ……。




「……あの、雨宮さん」




思い切って、話しかけてみる。

今日は静かですね。と。

その時の雨宮さんは、やっぱり無表情のまま私へと再度視線を向ける。

そして……何を言うでもなく、その姿を一瞬のうちに消した。


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