「視えるんです」
「あ、逃げた」
そう笑う本田先輩。
……なんで、逃げる必要があるんだろう……。
「雨宮はキミが苦手みたいだね」
「えぇ? 苦手? なんでですかー」
「さぁ。理由はわからないけど、『苦手だ』ってこの前言ってた」
「えー……そうなんですか……」
やっぱり、アレかな。
私は足手まといだからかな。
関わると面倒な奴。 そう思われているのかも……。
「でも、消えてくれてよかった」
「へ?」
「南沢さんと二人きりで話すことなんて、あまりなかったから」
……あ、そう言われれば、そうかもしれない。
私からすれば、『二人きり』という時間はあったけど。
その時はまだ、私は視えなかった。
私が視えていない時でも、先輩には雨宮さんの姿が視えていたのかも。
……ってことは、もしかして。
「あの……本田先輩」
「ん?」
「この場所に私が初めて来た時も、雨宮さんは先輩のそばに……?」
「あぁ、うん。 その椅子に」
……やっぱり居たんだ!!
つまり、キスするところを、見られてたんだ……!!