「視えるんです」




「あ、逃げた」




そう笑う本田先輩。
……なんで、逃げる必要があるんだろう……。




「雨宮はキミが苦手みたいだね」

「えぇ? 苦手? なんでですかー」

「さぁ。理由はわからないけど、『苦手だ』ってこの前言ってた」

「えー……そうなんですか……」




やっぱり、アレかな。
私は足手まといだからかな。

関わると面倒な奴。 そう思われているのかも……。




「でも、消えてくれてよかった」

「へ?」

「南沢さんと二人きりで話すことなんて、あまりなかったから」




……あ、そう言われれば、そうかもしれない。

私からすれば、『二人きり』という時間はあったけど。
その時はまだ、私は視えなかった。

私が視えていない時でも、先輩には雨宮さんの姿が視えていたのかも。

……ってことは、もしかして。




「あの……本田先輩」

「ん?」

「この場所に私が初めて来た時も、雨宮さんは先輩のそばに……?」


「あぁ、うん。 その椅子に」




……やっぱり居たんだ!!

つまり、キスするところを、見られてたんだ……!!


< 110 / 214 >

この作品をシェア

pagetop