「視えるんです」
想い




「……雨宮さんは、先輩と行った方がよかったんじゃないですか?」




放課後、私以外誰も居ない教室で呟く。

いや、正確には、雨宮さんがそばに居るんだけどね……。

でも視えない人からすれば、私が一人で何かを呟いているように見えるだろう。

……ま、誰も教室に来る人は居ないだろうけど。




「本田が俺を残したんだから、文句ならアイツに言え」

「……ですよ、ね」




……そうなのだ。
翔先輩が、『雨宮は南沢さんと居て』と言ったから、彼は今、私のそばに居る。

多分、私が一人になることを心配してくれたんだろうけど……雨宮さんと一緒に居るのは、正直しんどい。

また『体貸せ』とか言われそうだし、また怖い笑顔が出たら……と考えると、背中の辺りが一気に寒くなる。




「おーい、南沢ぁ」

「ひぃ!? ……って、半沢先生!?」

「おいおい、まるでお化けでも見たような顔だな? まぁ、そばにホンモノが居るが」




教室のドアのところでけらけら笑った半沢先生は、ヒョイッとお茶のペットボトルを投げてきた。


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