「視えるんです」
胸がギューッと締め付けられて、苦しい。
その事故を見たわけじゃないのに、頭の中では映像として当時のことが浮かぶ。
会ったことのない奥さんや息子さんの最期の姿、生き残った、先生の表情……それを想像してしまい、悲しくて辛くなる。
「……で、嫁も息子も『上』へは行ったんだが、なんかこう、狭間に残っちまった子供たちを見るとな、放っておけないんだよ」
……そっか。
だから先生は、たくさんの子供たちを、『上』へ送っているんだ……。
「……本田を見てると、ついつい息子と重ねちまうんだよなぁ。
生きてりゃこんな感じなのかな。と、色々考えるんだよ」
「そっか……」
「だからかもしれねぇな。 生きたいと願ったアイツを、放っておけなかったのは」
そう笑った半沢先生は、椅子に座って足を組んだ。
「本田には言うなよ? なんつーか、恥ずかしいだろ?」
「……はい」
笑顔の先生に、私も微笑んだ。
……その数分後、翔先輩が図書室そばのトイレから戻ってきた。