「視えるんです」


先生の、息子……。




「もう10年も前になるな。 生きてりゃ本田と同い年だ」

「じゃあ、7歳で事故に……。 あの……先生って、結婚してたんですね……」

「あぁ、してたよ。 もっとも、今は一人だが。
嫁も同じ事故で死んだ。 俺の運転する車で、俺の操作ミスのせいでな」




ドクン、ドクン、ドクン……。

先生の言葉一つ一つが、胸に突き刺さる。

半沢先生の運転する車で、先生の操作ミスで、奥さんと息子さんが亡くなった。

先生は淡々と言葉を続けるけど、私の心臓は、痛みを増すばかり……。




「家族旅行へ行く途中の、山道だった。
突然目の前に女が現れてな、そのせいでハンドルを取られ、谷の下へ落ちた。
女が幽霊だって気付いたのは、落ちてる最中だったんだ。
普段なら気にも止めず通り過ぎるのに、その日は何かが違った。
今でも、その『何か』がなんだったのかはわかんねぇけど。
でも俺は事故を起こし、嫁と息子は死んだ。 生き残ったのは、ほぼ無傷の俺だ。
大事故のはずなのに、俺だけが生き残ったんだ」


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