「視えるんです」


視線を合わせるのは怖いから、横目でチラリと見るだけだけど……絶対私を見てる。
怖い気配はしないけど、しくしく泣きながら私を見てる。

……本当に、どうしよう。


雨宮さんのことはもちろん、この女の人をどうすればいいのかも、全然わからない……。







「雨宮さん……」




雨宮さんは、『上』へ行きたがっている。
先生の言葉が本当なら、当然、『上』へと見送ってあげるべき。

……だけど、このままお別れなんて……。




ーー『お前のコト、結構好きだった』




……私、その言葉に何も返してないよ。

何も、言ってない。


このままお別れだなんて、そんなの、イヤだよ……。











「少し体を貸してくれないか、南沢」






……え?


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