「視えるんです」
ーー『人は何故生きているのか。 そして、何故死んだ後も生き続けるのか。
今まで誰も知り得ることのなかったことを知る。 それが俺の目的だ』
雨宮さんの言葉が、鮮明に蘇る。
ーー『俺がこの世界を解明したとしても、『俺』が発表出来ないんじゃ意味がないだろう?
俺は『俺』という名を世に残したいんだ。 なのに出来ない。
それが俺の犯した重大な、そして愚かなミスだ』
ふふっ……そんなこと言ってたっけ。
……結局、雨宮さんは謎を解き明かしたんだろうか?
世界の成り立ち、幽霊という存在、そして、行く末……。
狭間の世界からの景色は、雨宮さんの目にはどう映っていただろう?
「……雨宮さんは、『世界』というものを解明したがっていました。
この世とあの世、そして、幽霊たちが居る世界……全てを知るために、自ら幽霊になったんです」
翔先輩に、雨宮さんの目的を話していく。
……英雄とかその辺の言葉は、雨宮さんの名誉の為に黙っておこう……。
「世界、か。 なるほど、それで傍観か」
「はい。 全てを見て、世界を知る。 その為に幽霊になったらしいです」
「でも、それで世界を解明したとしても、発表する場というのが、幽霊には無いんだけどね」
「……ですよ、ね」
……うん、普通は死ぬ前にそれに気付く。
でも雨宮さんは、気付かなかったんだよなぁ……。
自分の名前を残したい。でも死んでしまったら何も出来ない。
彼は、それに気付くのが遅すぎたんだ。
「……もしもまた会えたら、聞いてみたいですよね」
「解明したのかどうかを?」
「はい」
知りたくて飛び込んだ世界で、答えを得たのかどうか。
それを、雨宮さんに聞いてみたい。
「……また、会いたいな」
雨宮 秀一。
『上』へ行った雨宮さんは、『忘れた』と言っていた自分の名前を思い出したかな?
お父さんやお母さんのことも、全部思い出してたらいいな……。
「雨宮の墓に、行ってみようか」
「……え?」
「実際に会ったりは出来ないと思うけど。
でもお墓っていうのは、彼らの世界と一番近い場所だから」