「視えるんです」


車は山道を進み、ふっと開けた場所に出た。

ここが駐車場であり、そこから少し歩いたところに墓石が並んでいる。

……ここに、雨宮さんのお墓があるんだ。




「こっち」




車を降りた先生は迷うことなく歩いていき、お花やお供え物を持った私と先輩は、そのあとを静かについて行く。

お盆やお彼岸とは違うから、お墓参りをする人の姿は無い。



木の葉が風に揺れる音、鳥のさえずり。それ以外はなく、とても気持ちいい。



綺麗に整備された通路を進んでいくと……他の墓石から少し離れたところに、あった。




雨宮 秀一




下界を見渡せる絶好の位置に、たった一つだけの墓石。

雨宮さんだけの為のお墓。 個人墓、というのだろうか。

他の名前は無く、正面に『雨宮 秀一』と大きく刻まれている。




……そこからの景色は、まさに絶景だ。

空も海も、街も。

全てが、特等席に座る彼のもの。
そんな錯覚に陥る。



見てますか、雨宮さん。

私、来ましたよ。


雨宮さんのところに、来ました。


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