ONLOOKER Ⅴ


「なるほど……」
「あの、いらっしゃいます?」
「もうじき戻ってくるんじゃないかにゃー?」
「そういうことなら、わかりました、任せてください。わざわざごめんね、乃恵さん」
「よかった。じゃあ、よろしくお伝えくださいね」
「うん、ありがとう」


再び重厚な音を立てて、扉が閉まる。
聖は「ジュース持ってくる」と言って休憩室の扉へ向かい、恋宵は少年の前にしゃがみ込んだ。
「お名前は?」と聞かれた少年が、不機嫌そうに返事をする。


「……浩太郎」
「浩太郎くんかぁ。何年生?」
「五年。……なー、さっきの」
「うん? 乃恵ちゃん?」


少年は一度扉を振り返って、また恋宵に向き直る。


「ノエルだよね?」
「ああ、うん。そーよ?」
「お姉さん、もしかして、Ino?」
「うん」
「Inoとノエルって仲悪いんじゃないの」


恋宵はぱちりと瞬きして、眉尻を下げて笑った。


「そんなことにゃいよ、仲良しにょろよ?」
「にゃ? にょ?」


恋宵の喋り方を聞いて、少年が目を丸くする。
これはなんだか面倒なことになりそうだと思ったのか、夏生が直姫たちのほうへ振り向いて、ちょいちょいと手招きをした。
なんとなく、きっと彼は子供の相手は苦手だろうなと直姫は思っていたが、一年に押し付けようとするところまで、ぴったり予想通りだ。

< 21 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop