ONLOOKER Ⅴ


直姫の薄い反応に、少年は憮然と息を吐く。

彼が直姫たちと初対面を果たしたのは、つい四日前のことだ。
それまでは、見かけたことも一度もなかった。
最近になってよく忘れるようになったのか、それとも今までは、准乃介がきちんと忘れ物を受け渡していたのか。

しかし、先日浩太郎が生徒会室へ連れて来られたのは、中庭で迷子になっていたからだったと思い出す。
あまり来慣れてはいないということだ。

直姫がそう考えていたところで、本人から、誰に対するともなく弁明があった。


「いっつもは……朝、家出る時に、准兄が忘れ物チェックしてくれるんだ。けど、最近、忙しいから」


俯き加減で、薄い唇を尖らせる。
准乃介の仕事が増えてきて、最近は早朝に仕事を済ませ、それから学校に直行することもあるらしい。
そのせいで、忘れ物のチェックが疎かになっているようだ。


「浩太郎ももう五年生だからな。ちゃんと自分でチェックできるだろう?」
「できるよ! でも、俺が一番最後に出るから、靴箱の上に鍵置きっぱなしになるんだ」


真剣な顔で言う浩太郎に、紅は苦笑いを浮かべた。
兄に確認してもらわないといけないほど子供だと思われるのは心外だが、かといってあまりしっかりしていると思われるのもなんだか嫌、ということなのだろう。
甘える隙を残しておきたいのかもしれない。
紅と顔を見合わせた直姫も、わずかに口許を緩めた。

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