ONLOOKER Ⅴ

「あ、れ……佐野!」


聞き慣れない、だが確かに聞き覚えのある声がした。
振り向くと、今真琴が素通りした階段を、上から降りてくる、見知った顔。
真琴は目を丸くして、口を開けた。


「へ? み、光村?」
「今日は帰っちゃうって聞いてたのに」


なんでここにと言いそうになって、彼が、今は名桜館学園に通っていることを思い出した。
小学校の頃の友人だった彼と、先日偶然の再会を果たしたばかりだったが、その場というのが、あの映画祭だったのだ。
卒業以来お互いなんの音沙汰もなしだったが、再び出会ったのは、名桜館の映画研究部と、悠綺高校映研部の作品出演者としてだった。

思わぬ再再会に驚いた真琴は、同時に、直姫と自分の「まさか」が大当たりだったことを知る。
光村や他の映研部員を引き連れて話しかけに来たのは、例の、強引で下心見え見えな、田畑部長だったのだ。


「機材見学って、名桜館だったんだ……」
「うん……よくOK出たよな」
「あは、そうだね」
「でも機材の使い方とか撮影テクとかより、部長は芸能人に話聞くほうがメインみたいで。レポーターみたいになってるよ」


真琴は、困ったような苦笑いを浮かべた。
他にどう反応したらいいのか、わからなかったのだ。
光村がいい顔をしていなかったのもある。
やっぱりあまり好かれてないんだ、と感じたが、同調するのはさすがに気が引けた。

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