sound village



俺を見下すように
少し離れた位置で
佇むオンナの背後に
無言の圧力を感じ見遣る。

久々に顔を合わせる
大好きな…

ああ…覚えがある。


…魔王降臨!!!

魔王は、人さし指を
唇にあて、俺に黙る様
指示を出す。

…この人…シレ〜っと
何やってんだよ!?

先程までと違った意味で
顔面が引きつっているのが
嫌という程、自覚している。
しかしながら、今の魔王には
絶対服従に限る。

「あなたが、今年の二課の
新入社員?」

魔王が目を細め笑み
行動に移った。

「はい。二課の…」

やはり、ああ言う野心的な
奴って、役職付きの先輩に
媚びて仲間をつくりたいのか?
はたまた昇進の後ろ盾に
したいのか?

己がふっかけた喧嘩が
着実に炎上していく状況を
他所に、悠々と自己紹介を
始めやがった。

相槌もうたず、生温かい
菩薩顔でスピーチを聞いて
いた魔王が、向かい合っていた
女性社員の身体を、突然
反転させて徐に唇を開いた。

まるで、耳元にナイショで
語りかける様な小声で。

「ねえ、お嬢さん。あなた
今朝からスカートのファスナー
上げ忘れていたんじゃない?」

その言葉に、
一瞬にして敵は、
顔面を真青にした。

完全に俺たちからは
死角となっているが

「身だしなみを整えるのは
社会人として最低の嗜みよ?」

そう言いながら、
スカートのファスナーを
上げてやっているのは
明白でーーーー

「すいません!!」

居た堪れなくなったのか
そう言ってスカートの
ファスナーを押さえながら
部屋から彼女は
走り去ったけど。





< 523 / 625 >

この作品をシェア

pagetop