M√5

「いつもあいつが弾いてるのは……芽都のギター。
 中3から始めたギターなのに、すごい勢いで上達してっちまった。

 あいつ、大切なギター傷つけられたのと、ライブが失敗に終わったショックで、あんなに弱ってたんだな」



……毎日手入れされていたギター。


将人に話しかけても気づいてもらえなくて、ギターに嫉妬したこともあった。



……どんな思いで手入れをしていたんだろう。


……どんな思いでライブを終えたんだろう。



……どんな思いで親友の死を受け入れたんだろう。



さっきまでは輝いていた太陽も、ついには沈みかけていた。


茜色の光が雲や屋根に反射する。



「……ごめん、こんな話して。
 暗くなるから帰ろうか」


明るく言って立ち上がったのは倫生。


それに次いで私も立つ。



こんなに静かに別れたのは、初めてかもしれない。

< 110 / 154 >

この作品をシェア

pagetop