M√5

「……葬式で。
 あいつが命懸けで守ったギターが渡されたんだ。

 ……将人に」


ぽろぽろと、『汗』は止まることなく流れてくる。



「あいつのお陰で、ギターは無傷。
 十分に弾けたんだ。

 そのギターを持ってあいつは……俺のところに来て。
 ……世界一有名なバンドを組もうって……そう言って、走ってったんだ」


倫生からも深樹斗からも私からも、『汗』が出続けている。



「あいつはそのまま、いつも俺らが練習してた地域の小さい公民館の部屋に行って。
 中から鍵を掛けて……泣き続けてた。

 ……誰にも姿を見せずに」


そう言い倫生は無理やり目元を拭った。



「……そういう奴なんだ」



そして、穏やかに笑った。


< 109 / 154 >

この作品をシェア

pagetop