賭けで動く恋
日が沈んですっかり暗くなった頃鳴ったインターフォンの音に、2階の自室で作業していた手を止めて、袖が邪魔にならないように襷掛けしていた紐を外して着物を整えながら階段を下りる。
暗くなったのに一体誰だろう?
草履に足を通した時もう1回鳴らされたインターフォンに、せっかちだなぁと思いながら「今出ます」とドア越しに声をかけた。
「今晩わ。加賀恵実さん」
「貴方達、あの時の……」
ドアの向こうにいたのは3週間前にカフェで会った男性2人組み。
どうして家を知ってるのか、思ってもみなかった再開に呆然と立ち尽くす私に、今日もスーツ姿の男性が人好きのする笑顔を浮かべて胸ポケットから名刺を取り出して私に差し出した。
「急で驚いたでしょう。
私、ギャラリー若葉のオーナー、日比野 薫(ヒビノカオル)と申します」
「はぁ」
「そしてこいつはうちのギャラリーが援助してる画家で
「神谷 淳です」
「…はぁ」
渡された名刺とこの間と同じ着物と羽織を着て軽く頭を下げた神谷さんを流し見ていた私は相変わらずの神谷さん独特の声で次に告げられた言葉に裏返った声を出した。
「突然ですが恵実さん、モデルになって下さい」
「……………はあ!?」