賭けで動く恋
入れたコーヒーをーロ飲んで日比野さんは説明してくれた。

「元々、来年の4月にうちのギャラリーでこいつの個展の企画があがったんです。でも当の本人がやる気がなくてですね。出会った時もその事を話し合うためにあの店に行ったんです。俺達2人共甘党でしてね。
それで加賀さんと巡り合った訳です。

この3週間こいつは寝ても覚めても加賀さんの事ばっかりで、『もう加賀さんしか描けない』って言い出すし、描いたら描いたで『こうじゃない、違う』って言って1枚も絵が仕上がらない状態で……。

これはちょっとマズイと思って個展を開くのを条件に加賀さんの住所を調べさせてもらいました。

いやもう本当、この3週間のこいつの様子を見せたかったですよ。
魂抜かれたみたいに1日中ボーっとしてキャンバスに向き合ってたかと思えば突然発狂したみたいに物を壊すわ暴れまくるわ……。

なのでモデル引き受けて下さいね。もちろんモデル料はお支払しますよ」

斜め前の椅子に座ってる日比野さんは長い説明の最後、満面の笑顔を浮かべ身を乗り出して迫ってきた。

その勢いに押されつつも、私は即座に正面に座る神谷さんを見て首を横に降った。
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