ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「大橋くん!」
「敬太!」
「えっ!?」
日記に夢中で、浦野と沙奈に呼ばれていることに気付かなかった。
「着いたよ」
窓の外を見ると、自分の家の前だった。
「答えになりそうなことは見つかったか?」
「いいえ……まだ」
「そうか。なにかわかったら、俺たちにも教えてくれ」
「はい。あのー……」
俺は座ったまま、ずっと気になっていることを聞いてみた。
「ん?」
「磨理子さんの母親に身寄りがないって言ってましたけど、父親は?」
「あぁ……」
浦野は正面を向く。
サイドミラー越しに見える彼は、下唇を噛みしめていた。
「……俺、なんか、マズいこと聞いちゃいました?」
すると、ポツリとつぶやく。
「死んだよ……」
「え!?」
「自殺したんだ。事件のあと、崖から飛び降りてね」
「父親はあまりのショックで精神病院行き。母親は自殺したらしいよ」
俺は、忘れもしない誕生日の夜に、佑美が言っていた言葉を思い出す。
「しかも、磨理子の父親……兵藤は俺と同期の警官だったんだ。アイツは出世して、県警のお偉いさんになっちまったが、それでも年に1回は必ず一緒に飲んでな! いろいろ苦労もしたみたいだが、最後に会ったときは幸せそうな顔してたよ。『東京に上京したひとり娘が結婚するんだ』ってさ、ニヤニヤしながら。それが……」
浦野は言葉を詰まらせる。
これ以上その顔を見ていられず、俺たちは車から降りた。
「……泣いてたね」
沙奈が見てはいけないものを見たように言う。
「あぁ。呪いを解けたら、浦野さんも少しは報われるかな……」
遠くなるブレーキランプを見届けながら、強い気持ちが生まれた。
「沙奈!?」
調整が利かず、思わぬ大声になってしまう。
「ぇ、ぁ、なに?」
「由香里と連絡取れた?」
「ううん。電話も繋がらないし、ラインも返ってこないよ」
彼女は携帯を心配そうに眺めた。