ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



高速を走ること数時間。

新築の家が建ち並ぶ通り。その一角を見据えて、宇治木は言う。

「ここが長谷川菜摘の家だ」

くすみのない、まっ白な外壁は、見るからに幸せな家族の住まいであることを感じさせる。

――ガチャッ。

「はい……」

しかし、ドアを開けて出てきた母親の顔は暗い。

宇治木が警察手帳を見せると、露骨に怪訝な顔をした。

リビングに通されるも、お湯の沸いた音にすら反応は鈍く、

「どうぞ……」

とお茶を差しだす言葉にも覇気はない。

「今日は娘さんにお会いしたくて伺いました」

宇治木が先陣を切る。

「……またですか。無駄ですよ」

すると母親は、立っているのもつらかったかのように腰を下ろした。

「ハァー……。娘はあの事件以降、部屋から出てきません。学校もずっと休んでいて……。私たちにはどうすることもできないほど、ふさぎこんでいるんです」

「僕にはわかります、娘さんの気持ち。どうか話をさせてくれませんか?」

俺の言葉に、母親の表情が若干明るくなった。

「えぇ……、でも、返事をしてくれるかどうか……」

母親に案内されて、2階へ。

その廊下を窓から射す西日が温め、足の裏が心地よい。

だが、どこか不穏な雰囲気を感じた。とくに、ある扉の向こうから。

……この部屋に、俺たちと同じ、呪いのゲームの参加者がいるんだ。

先入観がそうさせているのだと気持ちに区切りをつけて、ノックする。

――コン、コン。

3人が見守る中、むなしく響きわたる音色。

返事は無い。

――コン、コン。

もう一度ノックをしたあと、俺はおだやかに話しかけた。

「菜摘ちゃん? 僕は大橋敬太といいます。あの日のことで、少しだけ話を聞かせてくれないかな?」

――コン、コン。

さらに、扉をたたく。が、聞こえるのは母親のため息だけ。

俺に焦りが生まれる。



 
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