ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「ねぇ! 僕もキミたちと同じ境遇なんだ! だから、教えてくれないか?」

「…………」

「僕ならキミの力になれるかもしれない。だから……だから……」

誰もいない部屋に問いかけている感覚だった。

中からは物音すらしない。

……せっかくここまで来たんだ!

――コンコンコンコンコンッ!

「頼む、教えてくれ! どうやったら終わらせられるんだ!?」

「……終わらせる? いったい、なんのこと?」

母親は再び怪訝な顔になる。

「今日はお帰りになって。あの子はまだ、事件のつらさから立ち直れないの」

俺たちを階段の方へ押しやった。

「今日じゃなきゃ……今日じゃなきゃ、ダメなんです!」

冷静さを完全に失った俺は、母親を強引に押し返す。

だが、

「大橋くん! 気持ちはわかるが、無理強いはよくないよ。さぁ、もうひとりの所へ行こう」

と宇治木によって止められた。

……今日じゃなきゃ、沙奈が……。

醜態を晒してでも突き止める。

けれど、そんな俺の思いは、開かずの扉の前で沈黙したのだった。

――ガチャッ。

「遠くからわざわざ来てくださったのに、本当に、ごめんなさいね……」

肩を落とす俺に、玄関を開けてくれた母親は何度も頭をさげる。

「行こう」

家の前に停めた車に乗りこもうとしたとき、俺はふと顔をあげた。

「ッ!?」

2階の窓、位置的に菜摘の部屋があった場所。

そこから顔だけを出して、こちらを睨みつける女の子がいた。

背筋が凍るほどの戦慄。

が、目が合ったとたん、顔色ひとつ変えずカーテンの奥に消える。

……なんなんだよ。

「大橋くん、どうした?」

「ぁ……いや」

前原ことみの家に向かう間も、菜摘の形相が頭から離れない。

……もし、俺が考える方法で生き残ったとしたら、俺たちも彼女のようになってしまうかもしれない。



 
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