ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



緊迫した空気に、沙奈と結んだ小指に力が入る。

「ダルマさんがころんだ!」

暗黒の中、声だけが響く。

急に早口になったり、はたまたゆっくりになったり、ときには変な発音を混じえる。

「川本くん……?」

由香里は急に神妙な面持ちで彼の顔をのぞきこむ。

周りは暗すぎるのに、俺たちの存在だけが闇にぽっかり浮かびあがる。

「だるまサンガころんだ!」

地獄から助けを乞うような重い、うなり声。

「ぉ、おい!」

「川本くん? どうしたの?」

小指を揺すって問いかける小泉。

佑美もすかさず声をかけている。

「だるまさんがコロンダ!」

だが、ふたりの問いかけに、一切反応しない川本くん。

……なにが起こってるんだ!?

そして、次の瞬間。


「ダるまさんが転んだだルまさんが転んだだるマさんが転んだだるまサんが転んだだるまさンが転んだだるまさんガ転んだだるまさんが転ンだだるまさんが転んダ……」


異常な早口。

その、ぞっとする声に、この世の者じゃない存在を感じた。

「おいっ! 川本くん、やめろってば!」

低く、高く、早く遅く。

まるで壊れたラジオのように繰り返される言葉が、全員の恐怖心をあおる。

……また、いつものおふざけだろ!?

俺は川本くんの顔をのぞく。

だが、大木に手をかざしたまま動かず、その表情は読み取れない。

その代わり、横一線並んだ凍てつく”子”の顔。

「ちょっと、どうしたの!? ねぇ、やめてってば」

由香里がヒステリックに叫ぶ。

が、


「ダるまさんが転んだだルまさんが転んだだるマさんが……」


彼の呪文は止まらない。

「ッ……」
「…………」

恐怖で声を出す者もいなくなった。

ついに闇は、全員の心までも支配したようだ。

川本くん、いや最初の鬼の声は、まるで”なにか”を召還するようにゆっくり高まっていく……。



「だ・る・ま・さ……



絶叫するような声が響いた、そのとき!



 
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