ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
小泉とふたりだけで肩を並べて歩くのは、そう多くない。
それは、まだ下の名前で呼んでいないことが物語っていた。
ごく自然な流れで、まったく違和感なく、呼びたい。今はそのタイミングを計っている状態だ。
「汚ねえな……」
想像はしていたが、彼の部屋は思った以上に散らかっていた。
「事前におっしゃってくだされば、掃除ぐらいしたんですけどね~」
そこら辺に置きっ放しの週刊誌を拾い集めながら、小泉は皮肉を言う。
「そうだよな。すまん!」
ふたり掛かりの片付けは30分で終わり、小さめの四角いテーブルの上にPCのみを置く。
「お前のパソコン、借りていいか?」
「ああ、いいよ!」
なにかしらの手掛かりを探すため、ネットに接続した。
……まずは、”ダルマ女”だな。
検索してみると、佑美が言ったとおり、”ダルマ女”という都市伝説は実際に存在し、サイトによってそのバックボーンはさまざまだった。
しかし、”伊達磨理子”という名前はどこにも出てこない。
……やっぱり、ただのイタズラなのか?
「なぁ、敬太。お前はどう思ってる?」
唐突に小泉は聞いてきた。
「なにが?」
「川本くんだよ! 朝のニュースを見たヤツも、担任の宮内も、自殺だって言ってたけど……」
「…………」
俺は、なにも答えられずにいた。
すると彼は、ひとつずつ可能性をつぶしていく手段に出る。
「事故……?」
「始発が出る間際の線路に? いつも冷静だった川本くんが?」
「そうだな」
小泉はすぐに納得した。
彼は、不可解な行動を取るような人間じゃない。
「じゃあ……やっぱり自殺?」
俺は瞬時に首を横に振る。
「バンド、有名なレーベルから声を掛けられたって言ってたろ?」
「たしかに。『卒業したらデビューする!』って、うれしそうに言ってた」
小泉の頭の中では、その日の記憶が甦っているのだろう。
川本くんがどんな顔をしていたか、思い出し笑いする表情で教えてくれた。
そう、彼に人生を悲観する余地なんてなかったはずだ。
「まさか、事件ってことはないよな?」
始めから答えがわかっているかのような口ぶり。
可能性は、もうひとつある。