ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



みんなが読み終えたとき、由香里が真顔で聞いた。

「てか、”四肢”って?」

「手足のことよ」

「それと”ダルマさんが転んだ”に、なんの関係があるの?」

「えっ、由香里、まさか知らないの?」

「なにを?」

「ダ・ル・マ・女!」

「ぅげっ……」

佑美が言ったその単語に、都市伝説好きの俺は聞き覚えがあった。

……それって。

俺が声にして発しようとしたとき、

「なんだそれ!」

と川本くんが声をあげた。

「はぁ~。これだから素人さんたちは……」

佑美は急に声のトーンをさげて話しはじめる。

彼女はどうにか怖い雰囲気を醸しだそうとしているが、聞いている俺たちからすれば笑いどころ満載の話だった。


ひとり旅の好きなある日本人女性が休暇を使い、1泊2日で旅行へ出かけた。
行先はアジアの、とある国。
が、そのまま音信不通になってしまう。
心配になった家族が現地まで赴き、懸命に探す。
地元警察は言葉の通じない家族を蔑ろにし、大使館は駆け落ちを強調して、適当な捜索を続けた。
それでも、あきらめない家族。
父親は嫌な予感にとらわれ、”男の楽園”へと足を踏み入れる。
夜になればネオンの瞬く、売春宿がひしめく街。
そこで目にしたのは、
“日本達磨“
と書かれた看板。
サッシは抜け落ち、鉄の支柱は錆びて剥がれた古い小屋。
顎だけで客に指図する受付役の示すまま、父親は薄暗い廊下を進み、やがて見えたカビ臭い布の仕切りをめくる。
すると……。
たくさんの裸の男たちが微動だにしない人形へと群がっていた。
光の届かない部屋の隅から、欲望の塊が密集する中央へ踏みだすと、父親は思わず嘔吐した。
人形だと思い込んだそれはなんと、四肢を奪われた女だったのだ。
そしてさらに……自分の娘であった。
変わり果てた姿の愛しい娘は、汚い男たちのオモチャにされて生きていたのだ……。


 
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