月と太陽
「誕生日おめでとう、しずく」

タケルはそう言うと、箱から指輪を取り出し、わたしの右手薬指にはめた。

当たり前だが、ピッタリだ。

わたしは自分の右手薬指で光る指輪を眺めた。

「ありがとう」

指輪を貰うだなんて初めてのことで照れくさい。

まるで結婚式の再現のようで、気持ちがホワホワして飛んでいってしまいそうだ。

「左手は、まだ将来のために空けておいてくれよ」

タケルはそう言って、微笑んだ。

わたしはタケルたちがなぜ、わたしの誕生日を知っていたのか不思議だった。

自分の誕生日を一度も口にしたことがなかったからだ。

理由を訊くと、亜利沙が教えてくれた。

「この家に住み始める時、書類を書いてもらったでしょ?その時、生年月日も書いたじゃない。だから、知っているのよ」

そういうことらしい。
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