イジワル王子と屋根の下
ー
「……」
時刻は夜11時過ぎ。
喉が乾いたからと自室を出て台所へと向かえば、家の中には誰の気配もない。
(…あれ)
一応見た玄関にも靴はなく、その姿が家にないのだと気づく。
あいつ、どこ行った…?
まぁ、ガキじゃあるまいしそんなの気にする必要ない。どうせコンビニかどこかだろうしな。
そう気にせず冷蔵庫から水を取り出し、部屋に戻ろうと歩き出す…が、頭によぎるのはマンションの入り口に掲示してあった『変質者多発中』の文字。
……いや、まぁどうせあんな犬狙うような奴なんていないだろ。普通だし。中の中だし。体型も、平べったいし。
…けど待て。普通だけど、普通に無難に顔は悪くはない。一応女だし、何かあったら…いや、でも、けどだな…
…あれ、つーか何で俺こんなにあいつのこと気にしてんだよ。
(…そんなことより)
「っ…」
頭をぐしゃぐしゃっとかいて、その姿を追うように家を出た。