イジワル王子と屋根の下



「……」

「……」



するとそこにいたのは、スーツ姿の見慣れた顔。仕事中らしい瞬だった。



「…!!」

「…!?」



(な、なんでここに瞬が…!?)



驚きから思わず出そうになった声を、ぐっと堪える。
どうやら偶然立ち寄っただけのようで、私がいるとは思わなかったらしい瞬も驚いた顔をしてみせた。

その隣には、同じくスーツを着た黒いショートカットの綺麗な女性の姿。



「えっとー、ショートケーキとモンブランと…」

「あ、はい…」



会社への差し入れなのか、女性は率先してあれこれとケーキを選ぶ。



「あとー…亀戸さん、何がいいと思います?」

「……」



いやいや、お姉さん。そんなことその男に聞いても無駄。

奴の性格上、聞いたところで



『はぁ?そんなん知るかよ。勝手にしろ』



なんて見下した目で冷たく言うに決まってる。


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