イジワル王子と屋根の下
「……」
腕をちょんちょん、と突いて問う女性に瞬は一瞬無言でケーキの並ぶケースを見る。
ところが次の瞬間
「そうだね、どれがいいかな」
そう言って、にこりと爽やかな笑顔を見せた。
(…!!?)
「ロールケーキもいいけど、チョコもいいし…」
「あ、でも鈴木さん確かチョコ好きだったよね。ならチョコケーキの方が喜ぶんじゃないかな」
「あっ、確かに。さすが亀戸さん」
「……」
な…何その笑顔…何その優しい言葉に、気遣い…
違う!これ絶対瞬じゃない!顔だけよく似た別人!双子の弟!!ドッペルゲンガー!!
普段とのあまりに違うその態度に、瞬本人であることが素直に認められるはずもなく、頭の中はひどく混乱する。