イジワル王子と屋根の下



「……」



腕をちょんちょん、と突いて問う女性に瞬は一瞬無言でケーキの並ぶケースを見る。

ところが次の瞬間



「そうだね、どれがいいかな」



そう言って、にこりと爽やかな笑顔を見せた。



(…!!?)



「ロールケーキもいいけど、チョコもいいし…」

「あ、でも鈴木さん確かチョコ好きだったよね。ならチョコケーキの方が喜ぶんじゃないかな」

「あっ、確かに。さすが亀戸さん」

「……」



な…何その笑顔…何その優しい言葉に、気遣い…

違う!これ絶対瞬じゃない!顔だけよく似た別人!双子の弟!!ドッペルゲンガー!!



普段とのあまりに違うその態度に、瞬本人であることが素直に認められるはずもなく、頭の中はひどく混乱する。



< 85 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop