アフターレイン
 面倒くさいけど、マールにはこれからいろいろ教えていかなきゃなんない。



 トイレの躾から始まって、爪の手入れやシャンプーにも慣れさせないとだし、人を引っかいたり噛んだりすることも駄目だとわからせなきゃいけないし。

 引っかいたり噛んだりの力の加減は、本当は兄弟たちとじゃれて遊ぶ中で学んでいくんだけど、マールにはそれがないからいちいち俺や直己が身代わりになる必要がある。



 前途多難だな。



 はあ、と深い溜め息を吐くと、直己が「アニキ」と俺を呼んだ。



「やばいかも」

「何が?」

「マールが和室の畳を爪でカリカリしてる」

「ちょっ、そういうのもっと早く言えよ!」

「だってアニキ、何か考え事してた」



 やばいやばいやばい。

 何ですぐに言わないんだ直己!
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