黄色い線の内側までお下がりください

 無くしたものを返してもらうまで私はここから動けない。

 彼はいつ来てくれるんだろう。

 私の一部を食べ続けているから、あれを食べ終わったら、あの味を忘れられなくてきっとここへ戻ってくる。


 私のように。


 それまではここへ来る哀れな人の相手をしよう。





 私はあなたのすぐ隣りにいるけれど、

 だって、ドアが開いていなかったから出られない。

 でもそんなことは気にしないでいい。

 




 今はまだ何もしないから。

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