「約束」涙の君を【完】
家に戻ると、おばあちゃんが花束を二つ持っていた。
「墓、行くか」
そう言って、私に花束を二つとも渡してきた。
そっと受け取ると、花の香りがした。
おじいちゃんも一緒に3人で山沿いの道を歩き、すぐ近くのお墓に向かった。
おじいちゃんとおばあちゃんが私を東京に迎えにきてくれた時、
二人の骨を、ちゃんと車に積んでくれていて、
お墓を建ててくれたんだ。
「あれ、誰か来たのか……」
お墓にたどり着いて見ると、
お墓には花がすでに供えられていた。
でも、私が今持っている花束と、何かが違う。
小さなひまわりがたくさん……
手を合わせて、目を閉じると、お線香の香りを強く感じた。
……お母さん、お兄ちゃん
もしかして、高校生の男の子がきた?
その人は祥太だよ。
おじいちゃんとおばあちゃんと、
祥太のおかげで私……
さみしくないから………
私が目を開けると、おじいちゃんが火のついた提灯を持っていた。
「一緒に帰るぞ」
そしてまた家に戻った。
家に入ると、奥にあるおじいちゃんとおばあちゃんの寝室に行き、
そこにある小さな仏壇の蝋燭に提灯の火を灯して、
また手を合わせた。
みんながいる居間ではなくて寝室に、
しかも傍目にはわからないような目立たない仏壇を置いたのは、
二人は何も理由は言わないけど、
私に気を遣っているんじゃないかって、
なんとなくそう感じていた。
いつまでも、引きずっていられない。
おじいちゃんとおばあちゃんのためにも、
私は、前を向いて生きていかなくちゃ……
お母さんとお兄ちゃんの写真をじっと見つめてから、
部屋を出た。
その後、自分の部屋に行き祥太にメールをした。
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かわいいひまわりを、
たくさんありがとう。
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たぶん、ううん、絶対にあのひまわりは、
祥太だと思ったから。
部屋から出ようと思った時、ポケットの中の携帯が震えた。
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緊張したよ
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え、緊張?
お墓の前で緊張している祥太を想像して、
なんだか笑ってしまった。
やっぱり祥太だったんだ。
本当に二人に、会わせたかった。
本当に二人と、会ってほしかった。