「約束」涙の君を【完】




8月29日



花火大会の日



花火大会に行くという事と、

もうすぐ学校が始まるという事で、


最近はなんだか、気持ちが落ち着かない。




毎晩、声を出そうと頑張っていたんだけど、

今日になっても出なかった。



高校行くまでに、声が出るようにしたかったのに……




高校、どうしよう。

このまま行って本当に大丈夫だろうか。




夕方、花火大会の準備をしながら、はぁ…とため息をついた。



花火大会だというのに、

いつものTシャツとショートパンツの姿を鏡で見て、またため息。



せめて髪型だけでも……と思い、

長い髪を編み込んで、耳下でまとめてみたけど、



はぁ……


ため息をつきながら、いつものポーチにボードと携帯を入れて、部屋から出ると、


すでに祥太が縁側に座っていた。



「どっか行くのか?」



おばあちゃんが居間から声をかけてきた。



「隣の花火大会に優衣も連れて行ってみるよ」



「花火大会?

優衣、大丈夫なのか?」


おばあちゃんが心配そうに言ってきたから、私はうん、うんと、何度も頷いて大丈夫だということを伝えた。



「少しだけ見てすぐ帰ってくるよ。

無理させないようにするから」



私が縁側から外に出ると、

祥太は立ち上がった。




「そうか。気をつけて行ってこい」


おばあちゃんに見送られて、


二人で庭先に出た。



「駐輪場があるから、自転車で行こう」


私が頷くと、祥太が首を傾げて顔を覗き込んできた。





「髪、かわいいじゃん」







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