「約束」涙の君を【完】
「具合、大丈夫か?」
祥太は私にグラスを渡すと、ゴクっと一口だけ飲んで、
テーブルにグラスを置いた。
「ありがとう。大丈夫」
私も一口飲むと、テーブルに置いた。
「ごめんね、せっかくの文化祭だったのに」
祥太は、ふっと笑って下を向いた。
「別に。気にしなくていいよ」
学校と真逆で、静まり返った部屋。
何か、話さなくちゃ……
「かっこよかった。執事」
「そうか?」
「ヤキモチ、妬き過ぎた」
「ん?」と、祥太は首を傾げた。
「たくさん女の子たちに声掛けられていて、
祥太、かっこいいから……
ヤキモチ妬き過ぎた。
それに、
祥太と二人で歩いていると、ジロジロ見られて、
あの子が彼女なの……って、
あんな子が……って、
きっとみんなコソコソ言って……」
「優衣」
祥太が私の言葉を遮った。
「それは違う。そんな風に誰も思ってない。
優衣は勘違いしているよ」
「勘違い?」
「確かに声は掛けられたけど、
変な意味じゃない。
彼女かわいいって言われて……
俺ちょっと、優衣が自慢だった。
だから、勘違いだよ。
それに、みんなが俺らを見ているのは、
たぶん……コンテストのせいだ」
「コン……テスト?」
「俺と優衣、勝手に学年代表のベストカップルになってる。
他の学年代表もいて、投票で明日優勝が決まるらしい」
「え、ベストカップル?投票?」
「朝、呼び込みしている時に、掲示板見たら、
三組の写真が貼ってあった。
みんなカメラ目線で腕組んで撮ってあったけど、
俺らのだけ、教室で二人で話している写真だった。
誰が撮ったか知らないけど、
優衣が、良い表情していて、
すげぇ……良い写真だった」
え……
「だから、ジロジロ見られたんだよ」
そうだったんだ……
「最初、マジかって思ったけど、
本当に良い写真だったし、
優衣の事を、みんなに知ってもらう良い機会だと思ったから。
まぁ、いっかって……」
祥太……
「優衣。
顔を上げて、上を向いて生きていくんだろ」
私は祥太の言葉に、頷いた。
「優衣のそういうところが、
昔から
好きだったよ」