「約束」涙の君を【完】
いくら声を出そうとしても、
声が出なかった。
息しか出せず、
だんだんと焦ってきてしまって、
息を吸いすぎて、頭が痛くなり、
苦しくなってしまった。
看護師さんがきて、点滴に注射器をつけていた。
しばらくすると、
体がポカポカと温かくなり、
気持ちが落ち着いてきた。
目が覚めたのが、お昼ごろで、
それからおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に、
医者の診察を受けた。
「血液検査と、念のために脳の検査もさせてもらったのですが、
異常は認められませんでした。
今、症状としては、
過換気と、声が出せない。
なので、失声症と考えられます」
おじいちゃんとおばあちゃんは、
目を見合わせた。
「どういうことですか?」
「優衣さんは、強いストレスを感じたことによって、
一時的に声が出せない状態にあるということです。
これは、すぐに治ってしまう人もいれば、
半年以上も声が出せない状態が続く人もいます。
特効薬というのはなくて…
一番良いのは、原因となっているストレスを取り除いてあげること、
なるべくストレスを感じさせないようにしてあげることですね」
「ストレス……
やっぱりそうだったかぁ……」
「周りの人は、あまりしゃべらせようとしないでくださいね。
本人は、しゃべらないことで気持ちが落ち着いている場合もあるので、
ゆっくりと待ってあげることが大切です。
過換気の方は、発作が出てしまった時、
もしくは、出そうな時に飲むお薬を出しておきますね」