ほんとの笑顔が見たかったんだ
俺は、立ち止まったまま、必死に考えた。

俺自身で決めた"待つ"と言う事が、果たしてそれだけでいいのか考えた。

じゅなにも俺は言ったよな。

"あいつが話してくれるまで待つ"って…。

でも…どうなんだろ。

このままただ待っていても…龍星はずっと溜め込んでいくだけなんじゃないのか?


見なかった事にして、この場を去るか。

それとも…声をかけてみるか…。


二択で迷った。

分かんねぇ…。

だけど俺、龍星の事、放っておけねぇ。


「龍星」

二択の後者を選んだと同時に、俺は龍星に話しかけていた。

「ソラ…。」

振り向いた龍星の目は、赤く充血していた。

ずっと…泣いていたのか?

「何泣いてんだよ…」

「…泣いてねぇよ」

龍星の隣に座ると、龍星は手で涙を拭いた。

「どう見たって泣いてただろが。下手な嘘つくんじゃねぇよバカ」

「…泣いてねぇって。アクビしただけだろバカ」

龍星の心の中に土足で踏み込んでしまうかも知れない。

でも…その前に龍星が壊れてしまう方が嫌だ。

「一人で抱え込んでんじゃねぇよ。友達頼れや…。」

俺が言ったその言葉を聞いて、龍星は泣いた。

ボロボロと涙をこぼして、泣いた。
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