ほんとの笑顔が見たかったんだ
夏の風が一瞬だけ優しく吹いた。

「ソラ…ありがとう…マジで」

それに紛れるかのように、龍星は小さく言った。

「…おう」

肩を震わせて、孤独に泣いていた龍星を見た時に、見なかった事にして去ろうかと迷っていた自分を思い出すと、少し怖くなった。

相手が助けを求めてくんのを待つだけじゃダメなんだ。

龍星が抱えているものが分かんねぇ俺は…まだ龍星を助ける事は出来ない。

だけど、今、出来る事をやっていこうって思う。

「じゃ、帰んぞ」

ベンチから立ち上がると、龍星は微かに笑った。
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