意地悪な彼が指輪をくれる理由
「日本のサグラダファミリア」とも称される横浜駅。
構内や駅周辺で次々と新たな工事が行われるため、一度も工事計画が完成したことはないからだという。
そんなこの駅で、私たちが乗る列車の路線は見事にバラバラだった。
数年前から同棲しているいずみと碧は京急線。
両親が小さな戸建てを購入したのを機に、実家を追い出されたという瑛士はJR。
そして中学時代と変わらず実家で暮らしている私は相鉄線。
横浜駅の真ん中、私たちは笑顔で手を振って別れた。
いずみも碧も、そして瑛士も、あの頃と同じ顔で笑っていた。
みんなあの頃と同じで、少しだけ違う。
本質的には変わらないけれど、それぞれがそれぞれの12年を歩み、大人になっている。
私は帰ったら当時のアルバムを引っ張り出すことを決意し、車両へと乗り込んだ。