意地悪な彼が指輪をくれる理由
そして数秒睨み合ったあと、互いにバカバカしくなってふふっと笑った。
「早速来てくれたんだ。ありがとう」
「取引先の病院が近いから、会社に戻る前に寄った」
昨日と違うネイビーのスーツを着ている瑛士は、ネクタイを少し緩め、視線をガラスケースに移す。
「女がつけてる指輪って、どれも同じに見えてたのに、真剣に見てみると色んなデザインがあるんだな」
テニスの試合の時を彷彿させる、真剣な眼差し。
店員として誠心誠意応えたい。
「どれか実際に手に取って見たいの、ある?」
「うーん。どれもキラキラしてるし、綺麗だと思うよ。他の店も含めて色々見すぎてわからなくなってきた。真奈美のオススメは?」
そう尋ねられ、私はすぐさまショーケースの裏を解錠した。
「オススメは?」という質問に対して、私は明確な答えを持っている。
迷わずその品を透明の指輪台ごと取り出し、黒地のトレーに乗せた。
細めのアームはもちろんプラチナ素材。
大粒のダイヤの両脇に小粒のダイヤが埋められた、合計0.2カラットのシンプルなリング。
ジュエルアリュール自慢のエンゲージリング、その名も「アリュール」だ。
私自身の夢でもあるこの指輪を、そっと瑛士の前へ差し出した。