意地悪な彼が指輪をくれる理由

「私のオススメはこれ。絶対に、これ」

ガラスの壁から解放されたリングが、瑛士を誘惑するように輝いている。

「結構シンプルなんだな。でも、すごく綺麗」

「アリュールっていうの。惹き付けるっていう意味。幸せとか旦那様の気持ちを、いつまでも惹き付けていられますようにっていう願いを込めて」

瑛士は小さくふーんとうなりつつ、様々な角度からじっくり眺める。

「オススメのポイントは?」

「アームの細さ、そしてダイヤモンドの大きさ、カット、位置、質。女性が指につけたとき、最も上品に見えるよう計算してデザインされてるの」

私は実際にアリュールを左手の薬指につけてみせる。

日頃身に付けている比較的安価なものに比べれば、ずっと上質で高価なダイヤモンド。

スポットライトから離しても十分すぎるほどに輝いている。

「どう? もっとゴージャスな方が彼女の好みかな?」

瑛士は指輪で光る私の指を真剣な顔で見つめている。

私自身を見られているわけではないのに、妙に緊張する。

< 17 / 225 >

この作品をシェア

pagetop