意地悪な彼が指輪をくれる理由
「私のオススメはこれ。絶対に、これ」
ガラスの壁から解放されたリングが、瑛士を誘惑するように輝いている。
「結構シンプルなんだな。でも、すごく綺麗」
「アリュールっていうの。惹き付けるっていう意味。幸せとか旦那様の気持ちを、いつまでも惹き付けていられますようにっていう願いを込めて」
瑛士は小さくふーんとうなりつつ、様々な角度からじっくり眺める。
「オススメのポイントは?」
「アームの細さ、そしてダイヤモンドの大きさ、カット、位置、質。女性が指につけたとき、最も上品に見えるよう計算してデザインされてるの」
私は実際にアリュールを左手の薬指につけてみせる。
日頃身に付けている比較的安価なものに比べれば、ずっと上質で高価なダイヤモンド。
スポットライトから離しても十分すぎるほどに輝いている。
「どう? もっとゴージャスな方が彼女の好みかな?」
瑛士は指輪で光る私の指を真剣な顔で見つめている。
私自身を見られているわけではないのに、妙に緊張する。