意地悪な彼が指輪をくれる理由
「そう言えば祐子さん、再婚するつもりはあるんですか?」
「えっ? な、何よ急に」
「だって、昔の好きな人に期待してたってことは、恋愛するつもりがあるってことですよね?」
「そりゃあ、まあ。子供の手がかからなくなったし、いつかは再婚したいと思ってはいるけど」
「だったら……あ、いらっしゃいませ。どうぞご覧くださいませ」
私たちの恋バナは、残念ながら来客によって中断せねばならなくなった。
慌てて接客モードに切り替える。
やってきたのは黒縁のメガネをかけている男性だ。
私より少し若いくらいだろうか。
服装からして、会社帰りに立ち寄ったものと思われる。
「プレゼントをお探しですか?」
「え、あ……はい。指輪を見たいんですけど」
「お誕生日か何かですか?」
「いや、その、プロポーズで」
ちょっと照れてはにかんだ笑顔。
あの時の瑛士とそっくりで、幸せそうで、切なくなった。
「それでは、こちらへどうぞ」
私はアリュールが入っているケースへと案内し、取り出す。
メガネの男性はそれを見た瞬間、
「あ、これだ」
と微笑んだ。
「お決まりでしたか」
「ええ。彼女、ここの店が気に入っていたようなので。事前に資料を見て目星を付けていたんです」