意地悪な彼が指輪をくれる理由

黒縁メガネの彼は、アリュール以外にも2〜3個の指輪を並べ、悩んで、結局アリュールを選んだ。

「ありがとうございます。プロポーズ、頑張ってくださいね!」

本当に、頑張ってほしい。

幸せになってほしい。

書き込み事件があってから、私がウェディング関係のリングを売ったのはこれが初めてだ。

彼が幸せになってくれたら、私もアリュールも救われるような気がした。

人の噂も七十五日と言われるが、ネットの書き込みは数年間閲覧できる場所にある。

もちろんどんどん目立たない場所へ行くのだが、検索をすれば引っ掛かる。

日常を重ねて記憶が薄れていくけれど、ふとした瞬間思い出すのと同じだ。

「いいなー、プロポーズ」

「そうねぇ」

「もう一度されたいですか?」

「……一度もされたことないけどね」

「えっ?」

「一度目はできちゃった婚だったしね」

「あー……」

「ろくでもない男だったしね」

「う……」

現実はそう甘くない。

でも、プロポーズに憧れたっていいじゃない。

女だもん。

こういう仕事をしているんだし、尚更よ。

私もいつかは結婚できるんだろうか。

もう28歳と約半年なんですけど。

彼氏もいないんですけど。

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