意地悪な彼が指輪をくれる理由
マリリン・モンローはシャネルの5番だと瑛士が教えてくれた。
あのスパイシーな香りは甘くてセクシーなルックスを引き立たせていたに違いない。
私、倉田真奈美はフェラガモのインカントチャームだ。
この甘い香りに自分を引き立ててもらうには、スパイスの効いたルックスが効果的。
シュッとひと吹きして、仕事着を兼ねた辛口パンツスタイルをチェックする。
香水を選ぶ時は、見た目とのギャップを計算するべきだと思う。
甘めのファッションに甘い香りの香水は胸焼けするし、辛めのファッションにスパイシーな香水は刺激が強すぎる。
甘辛のギャップを兼ね備えるのがバランスを——……
「なんで感動的な再会の場所が焼き鳥屋なのよ!」
「何だよ、文句あんの?」
「ありまくりよ。せっかく秀士先輩に会えたのに、色気もへったくれもないじゃない」
「お前が言うなよ。お前が5月に俺らを誘った店だろうが」
香水、ほぼ意味無し。
鳥が焼ける香ばしい匂いには歯が立たない。
「本当に仲がいいんだな、二人とも」
私たちの夫婦漫才を見て、秀士先輩はにっこりと笑った。
ああ……余計な心配をして損した。
当時と変わらない爽やかな顔。
穏やかな話し方。
腰も細い。
やっぱり秀士先輩カッコイイ!