意地悪な彼が指輪をくれる理由




マリリン・モンローはシャネルの5番だと瑛士が教えてくれた。

あのスパイシーな香りは甘くてセクシーなルックスを引き立たせていたに違いない。

私、倉田真奈美はフェラガモのインカントチャームだ。

この甘い香りに自分を引き立ててもらうには、スパイスの効いたルックスが効果的。

シュッとひと吹きして、仕事着を兼ねた辛口パンツスタイルをチェックする。

香水を選ぶ時は、見た目とのギャップを計算するべきだと思う。

甘めのファッションに甘い香りの香水は胸焼けするし、辛めのファッションにスパイシーな香水は刺激が強すぎる。

甘辛のギャップを兼ね備えるのがバランスを——……

「なんで感動的な再会の場所が焼き鳥屋なのよ!」

「何だよ、文句あんの?」

「ありまくりよ。せっかく秀士先輩に会えたのに、色気もへったくれもないじゃない」

「お前が言うなよ。お前が5月に俺らを誘った店だろうが」

香水、ほぼ意味無し。

鳥が焼ける香ばしい匂いには歯が立たない。

「本当に仲がいいんだな、二人とも」

私たちの夫婦漫才を見て、秀士先輩はにっこりと笑った。

ああ……余計な心配をして損した。

当時と変わらない爽やかな顔。

穏やかな話し方。

腰も細い。

やっぱり秀士先輩カッコイイ!

< 175 / 225 >

この作品をシェア

pagetop