意地悪な彼が指輪をくれる理由
もちろんこれは冗談なのだが、本当にそうなったらどうしよう。
中学時代の夢が叶っちゃうよ。
2年生の時、進路希望調査票にふざけて「秀士先輩のお嫁さん」って書いて怒られたけど、その時の担任を見返せちゃうよ。
「いい加減にしろ」
はしゃぐ私と秀士先輩を、私を振った張本人である瑛士が低い声で牽制する。
相方のくせに、さっきからブスッとしているだけで、私がどんなにボケてもツッコんでくれない。
「真奈美、真面目にやれ。兄貴も、ちゃんとやる気がないなら外すぞ」
「そんなに怒るなよ。俺だって倉田に会えて嬉しいんだって」
「ふん。いいからさっき配ったプログラム表を見ろ。はしゃぎたいなら打ち合わせの後だ」
「はいはい」
瑛士は不機嫌なまま、組んでくれた二次会のプログラムについて説明を始めた。
何から何までやってくれてありがとう。
ここまでほとんど役立たずな私は、せめて本番で活躍しようと心に決め、表を熟読する。
そして前方にいる二人をちらり。
瑛士は表を真剣に見つめ、秀士先輩は私を見てニコリとした。
それに気付いた瑛士がいったん説明の口を休める。
「……見つめ合うな。よそでやれ」
「違うよ。たまたま倉田と目が合っただけ」
「いいから今は打ち合わせに集中しろ」
「お前、今日は何をそんなにカリカリしてんだよ」
「兄貴が不真面目だからだろ」