意地悪な彼が指輪をくれる理由
確かに瑛士、今日はいつもよりカリカリしている。
夕方に「仕事が押してて行けるかわからない」とメールが来たが、あの女医と何かあったのかと不安になる。
何かあったところで私がどうこうできるわけではないからもどかしい。
ていうかもしかしてこの二人、兄弟仲が悪いのかな。
だけど碧といずみのために、嫌々一緒に仕事をするのかもしれない。
一通りの打ち合わせが終わると、瑛士は自分のジョッキに入っているビールを飲み干し、
「あとは二人で好きにしろ」
と言ってさっさと一人で帰ってしまった。
取り残された私はポカンとして彼の背中を見送った。
今まで二次会関係で会うときは、必ず瑛士の部屋に泊まっていた。
今日だって何となくそうなるのかなぁと思っていたのだけれど……。
振られているし、台風で帰れないわけでもないし、期待していた私が厚かましかったってことだ。
「まったく、あいつは素直じゃないねぇ。相変わらず」
秀士先輩がライムサワーを口にしながらぼそりと呟いた。
「え?」
私が聞き返すと、先輩はにこりと笑った。
「ねぇ。倉田、瑛士のこと好きなんじゃない?」
顔に出ていたのだろうか。
「え……っと。まあ、はい」
認めるのはちょっと恥ずかしい。
「で、たぶん瑛士が迷い中」
「それはちがいます。私、きっぱり振られました」
「ふーん。じゃあさっき振られたばかりって言ってたのは」
「瑛士のことです」