意地悪な彼が指輪をくれる理由
彼は困ったような面白がるような、何とも言えない顔をして笑った。
「倉田はさ、一度振られたからって、諦めるようなタイプじゃないでしょ」
「まあ、気持ちはそう簡単に整理できませんからね」
先輩はきっと、中学時代の私が無邪気に好き好き言っていたことを思い出しているのだろう。
この年になって同じことを、瑛士にはできない。
「あいつ、迷ってると思うよ」
「やめてください。期待したくないんです」
「そんなに好きなんだ」
「諦めようとしてるんです」
ため息をついた私の頭を、先輩の温かい手が包んだ。
そしてわしゃわしゃと私の髪を乱す。
「ちょっ、秀士先輩?」
「あははは!」
一体何が楽しいんですか?
彼の手が離れて、手櫛で乱れを整える。
秀士先輩は満面の笑みで私を見つめ、もう一度ライムサワーをごくり。
「瑛士のこと、俺なりに協力してあげるよ」
「え?」
「役に立つかはわからないけど」
事態がまた少しややこしくなってきた。
かつて好きだった男に、かつて好かれていた男との恋を応援してもらうなんて……。
私は振られた瑛士にすがりつくより、いっそのこと秀士先輩にもう一度恋をしたい。
あの頃のように、叶わぬ恋でも無邪気に思いたい。
「だから、今日はもうちょっと付き合ってよ。ね?」
「はいっ」