意地悪な彼が指輪をくれる理由
そして私たちに残されたのは、「後片付け」という最終任務だ。
お店の人に手伝ってもらいながら、演出のために取り付けた機械や飾りを外していく。
「倉田、お疲れ。司会、上手だったよ」
秀士先輩はそう言って微笑み、今私が取ろうとして取れなかった高い場所にある飾りをさり気なく外す。
「ありがとうございます。秀士先輩も、お疲れさまでした。先輩なのに雑用ばっかりお願いしてしまってすみません」
「謝るなって。初めから瑛士に雑用だって言われてたから、そのつもりでいたんだし」
前回秀士先輩と会ったのは、9月の中旬だった。
会社帰りだったけれど当時はまだクールビズスタイルで、中学生の夏服のときとあまり印象が変わらなかった。
現在10月中旬。
チャコールグレーのスーツにキュッとネクタイを締めた姿は、先月と比べてグッと大人びて見える。
今気が付いたけれど、私はネクタイフェチなのかもしれない。
「ねえ、ちょっとセクハラ発言してもいい?」
秀士先輩が、突然こんなことを言い出した。
「えっ? 何ですか?」
「この間会ったときも思ったんだけど、倉田っていい匂いするんだよね」
「香水ですか?」
「うん。何ていうか、超俺好みの香り」
そう言って私の首元に顔を寄せる。
パーティドレスでデコルテを広めに露出している私は、突然の接近に顔が熱くなった。
「せ、せんぱっ……」