意地悪な彼が指輪をくれる理由
香水、焼き鳥に負けていなかったんだ。
ちゃんと香っていたんだ。
「ごめんごめん。つい」
悪びれずに微笑む秀士先輩にドキッとした。
魔性というか、何というか……。
秀士先輩は「色気」と「ズルさ」を携えている。
二次会の間、すれ違い様に「頑張れ」などと声をかけてもらったり、物を受け渡しする時に手と手が触れたり。
表情、動き、醸し出している雰囲気など、全て含めて「惹かれる」感覚がする。
そしてハッと気付かされるのだ。
ああ、私、この人のこと好きだったんだーーと。
「おい」
ドスの利いた低い声が背後で響いた。
振り向くと、すこぶる不機嫌な顔をした瑛士の姿が。
視線は兄である秀士先輩に注がれている。
「本当にいい加減にしろ」
「何を?」
「他人の結婚式で女口説くな。仕事しろ!」
「そんなに怒ることないだろ。倉田を口説いてたのは否定しないけど、ちゃんと仕事もしてる。何が気に入らないの?」
弟のわがままには付き合っていられないと、秀士先輩は涼しげな顔。
「倉田を俺に取られるのがそんなにイヤ?」
「はぁ? バッカじゃねーの? 俺はっ……」
瑛士はいったん言葉を飲み込み、悔しそうな顔をした。
二人の雰囲気がまた悪くなっていく。