意地悪な彼が指輪をくれる理由

香水、焼き鳥に負けていなかったんだ。

ちゃんと香っていたんだ。

「ごめんごめん。つい」

悪びれずに微笑む秀士先輩にドキッとした。

魔性というか、何というか……。

秀士先輩は「色気」と「ズルさ」を携えている。

二次会の間、すれ違い様に「頑張れ」などと声をかけてもらったり、物を受け渡しする時に手と手が触れたり。

表情、動き、醸し出している雰囲気など、全て含めて「惹かれる」感覚がする。

そしてハッと気付かされるのだ。

ああ、私、この人のこと好きだったんだーーと。

「おい」

ドスの利いた低い声が背後で響いた。

振り向くと、すこぶる不機嫌な顔をした瑛士の姿が。

視線は兄である秀士先輩に注がれている。

「本当にいい加減にしろ」

「何を?」

「他人の結婚式で女口説くな。仕事しろ!」

「そんなに怒ることないだろ。倉田を口説いてたのは否定しないけど、ちゃんと仕事もしてる。何が気に入らないの?」

弟のわがままには付き合っていられないと、秀士先輩は涼しげな顔。

「倉田を俺に取られるのがそんなにイヤ?」

「はぁ? バッカじゃねーの? 俺はっ……」

瑛士はいったん言葉を飲み込み、悔しそうな顔をした。

二人の雰囲気がまた悪くなっていく。

< 187 / 225 >

この作品をシェア

pagetop